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宮本 文幸 公式サイト | 「見た目」戦略の科学

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大谷翔平・高梨沙羅・りくりゅう・浅田真央……一流アスリートの「見た目」には、すべて科学的な理由があった

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2026年5月22日

大谷翔平・高梨沙羅・りくりゅう・浅田真央……一流アスリートの「見た目」には、すべて科学的な理由があった

大谷翔平選手の「見た目」が世界を動かす理由

WBCの円陣。「僕たちには憧れることをやめましょう」と語った大谷翔平選手の姿を覚えているだろうか。あの瞬間、チームの空気が変わった。

しかし考えてほしい。同じ言葉でも、発する人によって効果は変わる。大谷選手があの言葉を発したとき、言語情報だけではなかった。表情・声のトーン・身体動作——見た目が発するすべてのシグナルが、チームに伝わっていた。

リーダーのカリスマ性研究(Keating, 2020)によれば、わずか30秒の無音映像を見るだけで、視聴者はリーダーのカリスマ性を知覚する。大谷選手の「見た目のシグナル」は言葉を超えていた。チームを動かしていたのだ。

一流アスリートたちは、この「見た目の力」を戦略的に活用している——あるいは無意識のうちに最適化している。


「見た目」はアスリートにとって3つの機能を持つ

私はこれまでの研究から、アスリートの見た目が機能する3つの軸を提案している。

軸A:内なる武装(自分への効果)

試合前のルーティンとして「見た目づくり」を行うアスリートは多い。これは単なる習慣ではなく、科学的根拠がある。

心理学者アダムとガリンスキーが提唱した「Enclothed Cognition(被服認知)」理論がある。衣服やアクセサリーの「象徴的意味」を身にまとうことで、着用者の心理状態が変化するという理論だ。

WBC日本代表選手の金髪・アクセサリーは「国際舞台での自己解放」というコンセプトの視覚的表現であり、覚醒水準を高める。タイガー・ウッズが最終日に必ず赤いシャツを着るのも同じメカニズムだ。

高梨沙羅選手がメイクを試合前ルーティンにしているのも、軸Aの典型例だ。「これが自分の戦闘態勢だ」という心理的スイッチとして、集中力と自信を引き出す。ただし、この見た目変化が対外的に「整形疑惑」として批判されるという副作用も生じた。軸A(自己への効果)と軸C(対外への効果)は必ずしも一致しない。これが高梨選手の事例が示す重要な示唆だ。

軸B:内的結束(チームへの効果)

先の大谷選手の事例がまさにこれだ。チームのリーダーが発する非言語シグナル——表情・姿勢・声のトーン——はチームメイトのモチベーションと一体感に直接影響する。

ユニフォームも重要な役割を持つ。チームが同一の見た目を共有することは、集団同一性を視覚的に強化する。WBC侍ジャパンのユニフォームへの強いこだわりは、単なるスポンサー戦略ではなく、チームの結束を高める見た目戦略でもあった。

軸C:対外ブランド(ファン・スポンサーへの効果)

りくりゅうペア(三浦璃来・木原龍一)が金メダルを獲得したとき、「お似合いすぎる」「雰囲気が似てるよね」という声がSNSに溢れた。この反応は偶然ではない。2人の見た目が発する「統一感」「調和」が観客の脳内で処理された結果だ。「完璧なペア」というブランドイメージが自動形成されていた。

浅田真央さんが引退後も愛され続けるのも同様だ。氷上での表情・衣装・演技が一体となって形成した「真央ちゃんブランド」は、引退後も視聴者の記憶に深く刻まれたまま生き続けている。


アスリートの見た目は「パッケージデザイン」と同じ構造だ

私がかつて資生堂で開発したAg+(エージープラス)は、銀色のボトルという「見た目」で「銀イオンの殺菌消臭力」を瞬時に伝えた。テレビCMゼロで大ヒットした理由は、内側の価値と外側の見た目が完全に一致していたからだ。

アスリートの見た目も、まったく同じ構造で機能する。

大谷翔平選手の見た目が発するシグナルは「規格外の能力×謙虚さ×チームへの献身」だ。このコンセプトがユニフォームの着こなし・表情・立ち振る舞いから一貫して伝わる。だから世界中のファンを惹きつける。

一流アスリートたちは、意識的か無意識かを問わず、自分というブランドの「パッケージデザイン」を最適化している。


これはビジネスパーソンにも使える理論だ

大谷選手の「非言語リーダーシップ(軸B)」は、チームをまとめるマネージャーが学べる見た目戦略だ。りくりゅうの「統一感ブランディング(軸C)」は、クライアントとの関係構築に応用できる。高梨選手の事例は「軸Aを整えても軸Cへの影響を設計しないと予期せぬ結果を招く」という教訓を与えてくれる。

見た目を「飾るもの」として捉えるか、「戦略的に設計する資産」として捉えるか——その違いが、競技でも、ビジネスでも、人生でも大きな差を生む。

次回からは、アスリートの見た目戦略の各軸を具体的な選手の事例で深掘りしていく。


筆者:宮本文幸(みやもと ふみゆき) 桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授。資生堂に33年間勤務し、Ag+(エージープラス)などのヒット商品を手がけた後、2018年より現職。専門はプロダクト・アピアランス研究。「ヒトとモノの売れる見た目をつくる」をテーマに「見た目戦略」を研究・執筆・講演活動を行う。東洋経済オンライン寄稿者。


【関連記事】 ・「10代の頃と顔が違う」高梨沙羅選手が銅メダル獲得も”見た目”ばかりが話題のワケ(東洋経済オンライン) ・「お似合いすぎる」りくりゅうペアの相性を裏づける科学的理由(東洋経済オンライン) ・前回:「第一印象」は変えられる――見た目の科学が教える6つの法則 ・次回:試合前に一流選手が必ずやる「見た目ルーティン」の科学――高梨沙羅・大谷翔平・タイガー・ウッズの共通点

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ヒトとモノの「売れる見た目」を科学する
桜美林大学 ビジネスマネジメント学群 教授

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