ビックロ閉店 ~ 2つの概念融合のマーケティング
新宿のビックロ(ビックカメラとユニクロ)が開店から10年経ち、閉店することとなりました。
マーケティングの新価値創造の手法として、一見関係のない2つの概念を合体・融合させる手法があります。ビックロもその手法によるものといえます。
ビックカメラ=家電量販店、ユニクロ=ファッションのお店であり、異業種。わたしたちは本来、異なる2つの概念が一緒になると、驚きとともに「違和感」が生まれ、「何?」「なぜ?」といった「興味」や「疑問」が沸いてきて、「注意」がひきつけられます。まさしく「ビックロ(びっくり)」というわけです。そして同時に、暗黙のうちに新しい価値への「期待」が膨らむのを感じると思います。
マーケティング的にはここで大きなチャンス到来となります。情報が氾濫・爆発している現代には、消費者の「注意」をひくことが最大のハードルなのです。ビックロはそのハードルをいともたやすく飛び越えるくらいの驚きをもたらしてくれました。
しかし、それが定着するかどうかは、この2つの融合によって、今までになかった新しい価値が創れたか否か、といえます。1+1=2ではダメなのです。ビックカメラとユニクロが同じ空間に「並存」するだけでは新しい価値が生まれたとはいえません。消費者の期待に応えたともいえないでしょう。2つが融合して今までになかった新しいサービスや品ぞろえが出来てこそ、その後の存続が確かなものとなるのです。
融合する2つの概念とは、様々なレベルのもが想定されます。ビックロのように2つのブランドのコラボレーションの他、シャンプーとリンスを融合した「リンプー」のように2つの商品カテゴリーの融合、「緑茶」に「生」の特徴を付与した「生茶」のように、ある商品カテゴリーにそれまで結びついたことがなかった特性を加えるものなどが考えられます。
殺菌デオドラントのエージープラスは「銀(イオン)」と「デオドラント」が融合して「殺菌消臭」という新しいデオドラントの価値をもたらしました。そして20年以上のヒットを続けています。それは言い換えるならデオドラントの新しいサブ・カテゴリーを形成したと捉えることができます。
ビックロは残念ながら、小売り店や小売サービスの新(サブ)カテゴリー創造には至らなかった事例、といえるかもしれません。
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