金属製の鉛筆「メタシル」~新カテゴリー創造の事例
「芯まで金属製なのに消しゴムでキレイに消せる不思議な鉛筆“metacil(メタシル)”」が2022年6月下旬に発売されるとのことです(gigazine.net:2022年6月12日参照)。
そのままで約16Km分の筆記が可能、すなわち鉛筆削りが不要なのです。
ゼロ・プロモーション・マーケティングの視点から、とても興味深い事例といえます。
この商品が応えてくれるインサイト(誰も気づいていない潜在ニーズ)は「鉛筆削りが要らない」「先が丸くなって書き味が変わったりしない」など、本来鉛筆を使う上でつきまとう潜在的な不満や不便さから解放してくれる、という点が最も大きいのではないかと推察されます。
同様の不便さから解放してくれるモノとしては、消しゴムで消せるフリクション・ボールペンなどが既にありますが、鉛筆特有の気軽さや書き味などに愛着を持つ人にとっては、メタシルが新しい愛用品のポジションを埋めるモノになる可能性が考えられるでしょう。
一方「ひと目で心をつかみ購買へ誘う外見=アウトサイト」の観点からはどうか、というと、広告で示されたデザインとは別の方法も考えられます。
「金属(metal)」×「鉛筆(pencil)」=「メタシル(metacil)」という、もともと別の2つの概念が融合した新価値創造ということを踏まえ、その外見に「金属の塊」というイメージを直観させる工夫が考えられます。
現在、広告されている画像にはマットな質感の黒や赤などの色彩が用いられていますが、これらを金・銀・銅などのメタリックな色と質感にすることで、より「注意」をひきつけ「違和感」とともに「興味」をかきたてる可能性が高まると考えられます。さらにその後で「金属製の鉛筆」と“種明かし”がされると「なるほど! だからこんなデザインなんだ」という「納得感」につながり、「記憶」に刻まれるとともに「どんな書き味なんだろう」というように「興味」は商品の使用場面に移っていきます。
さらには「金属の塊」を色や質感だけでなく「例え」や「意味」につなげるようなイメージ・モチーフとして外見デザインに反映させる工夫の余地も考えられます。例えば「金の延べ棒」「H型鋼材」「メタル・ロボット」などです。握りやすさやデザイン表現のしやすさ、消費者の直観への働き方などを総合的に評価・分析する必要がありますが、適切なイメージ・モチーフが活用できると、アウトサイトの力は大きく高められます。
本来は関係が無いはずの2つの概念が融合した外見は、私たちの潜在意識下で購買行動へと強く駆り立てる力を発揮するのです。
いずれにせよメタシルは画期的で期待できる新カテゴリー商品として、ぜひ注目したい新製品といえます。
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